この装画は見玉から秋山郷に入った鈴木牧之が最初に行き着いた村、清水河原の景色である。初めての秋山郷の印象を見事に捉えている。旅の開始に当たり、印象を受けた二軒の民家の印象を捉えていて興味深い。ここには川岸の畑地、落水、樹木などが描かれており、鈴木牧之のこの地への期待が伝わってくる。渓谷を形成している背後の赤倉山の崖や樹林地の様子が、渓谷の地形とともに色彩豊かに表現されており、その描写力は秀逸である。他にも数多くの秋山郷の装画が残されており、鈴木牧之が文人としてのみならず、絵師としても優れていたことがよくわかる。